Magic The Gathering にはシネクドキがたくさんある
ゆる言語学ラジオで「シネクドキ」の意味を知ったので書いた.
ゆる言語学ラジオ
最近よく聞いているラジオ,というか見ている動画.
どの動画か忘れたが「シネクドキ」について説明があったので,そういえば MTG のあれもシネクドキっていうんだなぁと思ったので書いた.
シネクドキ
提喩(ていゆ)は、修辞技法のひとつで、シネクドキ(synecdoche)ともいう。
換喩の一種で、上位概念を下位概念で、または逆に下位概念を上位概念で言い換えることをいう。
(中略)
例
- 「石」:文脈により、半導体素子や、宝石類などを指す。
- 「本(ホン)」は演劇関係者の間でシナリオを意味する。
- 「笛(ふえ)」は音楽関係者(特にオーケストラ)の間ではフルートを意味する。同じく「ラッパ」はトランペットである。
- 「人はパンのみに生くるにあらず」;「パン」は「食べ物」、あるいは広く「物質的充足」の意味で用いられる。
Wikipedia 情報.
上の例で言えば,「石」,「本」,「笛」という単語を,より狭い意味としてつかっている.逆に,「パン」は「食べ物」の代表としてパンという単語が使われているだけで,文字通り「パン」を表しているわけではなく「食べ物」を表している.
小学校で「笛」というと「リコーダー」だろうし,「ご飯」を食べにラーメン屋にいくのはおかしくない.そんな感じだと思う.
Magic: The Gathering
Magic: The Gathering(MTG)は 1993 年に販売された世界初のカードゲームである(Wikipedia 情報). 数千万の値段がつく超高額カード「ブラックロータス」は MTG プレイヤーでなくとも知っている人は多いかもしれない.
MTG でのシネクドキ
MTG の配信をみていると,たまに「ジャイグロ」や「ラス(ラスゴ)」という言葉が使われることがある. カード名を略したもの,と思いきや,「ラ」も「ス」も名前に入っていないカードが「ラス」と呼ばれることもある.
じゃあこれらはなんだ,と思って調べると,結局カード名の略語であることがわかる.
以下のカード名を略したものが,それぞれ「ジャイグロ」,「ラス」である.
- ジャイグロ = ジャイアント・グロウス = Giant Growth
巨大化/Giant Growth - MTG Wiki - ラスゴ = ラス・オブ・ゴッド = Wrath of God
Giant Growth はクリーチャー(モンスター)を強化する代表的な呪文である.そのため,Giant Growth という特定のカード名が,「クリーチャーを強化する呪文」の総称になったと思われる(自分は MTG 歴が短いので想像の話).
Wrath of God も同じような話で,「クリーチャーを一掃する呪文」の総称として使われている.
これらは下位概念が上位概念を表すシネクドキである.
なぜ「ティム」と呼ぶのか
ジャイグロやラスと同様に,特定のカードを指して「ティム」という単語がしばしば使われる.これも有名なカードが「ティム」と呼ばれていたんでしょ……と思いきや,「ティム」と呼ばれていたカードは「放蕩魔術師/Prodigal Sorcerer」.「ティム」要素がまったくない!
これについても mtgwiki に載っている.
映画『モンティ・パイソン&ホーリーグレイル』に登場する「魔法使いティム」が語源。第6版まで(もしくはタイムシフトされた時のらせん)のイラストが「魔法使いティム」に似ていることに由来する。また、同映画にて、彼が指差す先が次々と爆発するシーンがあり、このシーンが放蕩魔術師/Prodigal Sorcererの能力のイメージと一致するところも由来の1つであろう。
http://mtgwiki.com/wiki/%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%A0
カードのイラストやイメージが一致する別のものが「ティム」と呼ばれていたらしい.
メトニミー
換喩(かんゆ)、メトニミー(英: metonymy)は、修辞学の修辞技法の一つで、概念の隣接性あるいは近接性に基づいて、語句の意味を拡張して用いる、比喩の一種である。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8F%9B%E5%96%A9
映画に登場する「ティム」が「放蕩魔術師」を彷彿とさせることから「放蕩魔術師」を「ティム」と呼ぶようになったとすれば,これはメトニミーと言えるのではないか(単に似ているだけにものはメトニミーと言わないかも.教えて偉い人).
というわけで,特定のカードを「ティム」と呼ぶのはシネクドキで,元となるカードはメトニミーで「ティム」と呼ばれていたからです.
うーん,単語の使い方がわかっていないので,おかしな文章になっている気がする.
いろいろある俗称
効果がないカードを「バニラ」といったり,ダメージを与える特定の呪文を「火力」といったり,プレイヤーにとっては当たり前でも,考えてみれば面白い表現がいくつもある.
元々ある単語をゲームに登場する概念に結びつけたり,ゲーム独自の言い方になっていくのは面白い.