「教える」の定義
この本では「教える」ことを、相手に望ましい行動を引き出す行為と説明している。そして、この望ましい行動を引き出すための手法が整理されている。
教える技術の3つの要素
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信頼を得ること 相手から信頼されなければ話を聞いてもらえないため、まず信頼を得ることが重要
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やらせたい行動を具体的に詳細に説明すること 抽象的な指示ではなく、具体的で詳細な説明が必要
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目標に向かっているかフィードバックすること 進捗を確認し、期待する行動ができているかを伝える
具体的に教えることの重要性
特に印象的だったのは、「教えるときはできるだけ詳細に具体的に教える」という点。「うまくやる」「きちんとやる」といった曖昧な指示では不十分なのは理解していたが、思い返すと自分も具体的な指示ができていなかったという反省があった。ただし、抽象的な課題に対処することを求められる場面もあり、常に具体的で詳細な行動を提示し続けるのは難しい面もあると感じた。
MORSの法則は使えそう。
(参考) MORS の法則
- Measured: 計測できる
- Observable: 観察できる
- Reliable: 信頼できる
- Specify: 明文化されている
フィードバックの重要性
個人的に「褒める」のはあまり好きではない。上から下に対する評価なので、明らかにそういう立場ではないならやりにくい。
本書では「褒めるターゲットは行動」と書かれている。例えるなら、褒めるというのは強化学習における正の評価のようなもので、それは事実に対する指摘なので上も下もない。必要なのは行動に対する評価(フィードバック)であって、エージェントのやる気とかモチベーションは別の話である。
「やる気があって感心感心」ではなく「これができているから目標に近づいているな」と考えることで、適切なフィードバックができるのではないかと思う。
全体的な印象
表紙には行動科学の活用とあるが、本書で科学的な内容が詳しく展開されるわけではなく、理論は背景として言及される程度で、内容は平易だった。
「教える時は具体的に、当たり前だと思うところから教えよう」「一度に教える内容は3つまでにしよう」といった内容が示されているため、本書自体もその実践として、シンプルで実行しやすい形で書かれているのではないかと思う。
実践的な内容が中心で、例えば「信頼を得る」という項目があっても、具体的な信頼獲得の方法や傾聴スキルなどの詳細は含まれていない。むしろ具体的で実用的な手法に焦点を当てているという印象を受けた。
あと、自分が身につけたいのは teaching じゃなくて coaching かも。