「聞く技術」とあるので、ティーチングやコーチングについての話題はない。少し古い本なので、若干時代を感じる部分もあった。
話すより聞くことが重要
「聞く技術」なので当たり前だけど、想像以上に徹底して「聞く」ことが書かれていた。相槌以外には話さない、意見を聞かれたら手短に、という具合。沈黙を埋めるために話すことも少ないのではないかと思う。
こう聞くとただそこにいるだけのように思えるが、どのように相槌を打つか、自分の意見をどのくらい話すのかなど、話に介入する場面は存在する。「聞き上手」との差はそこで出るのだと思う。
相手の話に興味を持ってきちんと聞きつつ、自分からは多くを語らないという絶妙なバランスが「聞く技術」だろう。
本文中でも、
ですから、積極的に聞くということは、二律背反の原理を含んでいます。(p. 136-137)
とある。
評論家にならない
例えば「電車が遅延して遅刻し、怒られた」という話に対して、どの立場で聞くかによって返答が変わる。先生や親、上司の立場なら「遅延しても間に合うようにすべき」という正論を言ってもよい。一方で、愚痴を聞いているだけなら「電車の遅延」という不運に理解を示す方がよいかもしれない。
本書の内容から考えると、正論マンは聞き上手ではないと判断されると思う。そもそも、自分の意見を通したいなら、まず相手の話を聞く方がよいのではないか。
正しいことを言ったり、新しいことを教えたりするより、相手の気持ちに立って話を聞くことが必要な場面もある。
Listening と Ask の違い
自分からは話さない、相手に話してもらう、を徹底しようと思うと質問攻めになってしまうかもしれない。
「聞く」を本書では以下のように分類している。
- Listening:話し手の意図がある
- Ask:質問する側の意図がある
質問攻めとは Ask をしすぎることだと思う。本書でいう「聞き上手」は Listening ができることで、相手が話している状態はその結果として生まれるものなのだと思う。
感想
「相手の気持ちを想像して話を聞く、ただし自分ごとにはしない」とか「相手に興味を持つ、ただし質問しすぎない」とか、要はバランスが特に大事なんだろうと思う。
本書そのものについて言うと、コラム集のような構成で、聞く技術が体系的にまとめられているわけではない。テーマの説明が不十分に感じる章もあり、内容の理解が難しかった。