『思考・論理・分析 「正しく考え,正しくわかること」の理論と実践』を読んだ
日常用法的理論の本を読んだ.
かなり前から積んでいた日常用法的論理の本.普段なんとなく使っている「論理的」や「分析」の意味を定義していて,「なるほどね〜」という気持ちになった.「前提はなんだろう」「どのような論理展開をしたんだろう」という視点を持てるので,そのような考えに慣れてない人には特に良さそう.
分かることは分けること
第一章「思考」の部分で分かることは分けることであるという内容がある.
物事を識別するためには色々なものと比べることで差異を際立たせ,その物事特有の性質を理解しなければならない.比べる際には,どのような切り口で比較するかが重要となる.この切り口を列挙することが「分けること」で,複数ある切り口を用いて差異を際立たせることで「分かる」のだという.
そして,「分ける」ために以下の3つが必要であると述べている.
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ディメンジョンの統一
分ける,あるいは比べる対象の抽象水準を同一にする
「りんごか野菜どちらか好きか」は抽象水準が異なるため不適切で,「りんごかトマト」「果物か野菜」の方がより適切.(親が同じでないと比較できないという感じ?)
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クライテリアの設定
分類基準,分類の切り口のこと.食べ物を「素材」で分けると「野菜,果物」などに分類できて,「国籍」で分けると「和食,中華」などに分類できる.
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MECE (Mutually Exclusive, Colloectively Exhaustive)
相互背反,集合網羅.モレがなく,かつダブりがない.現実で厳密なMECEは無理なので,MECE的な分類が必要になる.
言われてみればそれはそうだけど,あまり意識しない部分.
因果補足の難しさ
相関には単純相関と因果があって,これを見極めるのが難しい.
本書では以下の3つの留意点を挙げている.
- 因果の強さ
原因が結果に与える影響力はそれぞれ異なる. - 第三ファクター
X -> A, X ->B のような因果関係があり,A, B に相関関係を生じさせてしまうような X.A -> B に因果関係があるように見える.
例)X: 家族数,A: 茶碗の数,B: 米の消費量 - 直接的連動関係
ある結果を直接的に引き起こしている関係.
直接的連動関係についての例示は面白い.
「スピードの出し過ぎが事故の原因である」は一見正しそうに見えるが,スピードの出し過ぎが直接事故を引き起こしている訳ではない.
スピードの出し過ぎ→飛び出しに気づくのが遅れた→ブレーキを踏むのが遅れた→事故
のように,原因→結果の鎖がいくつも繋がっている.因果関係に働きかけて結果を変えるためには,複数ある原因を正しく認識することが必要である.
「人間がいなくなれば犯罪がなくなる」のような意見は,働きかける原因を間違えた例.
分析について
分析は,思考と同じように,情報を整理してなんらかの意味合いを得ることだと述べている.
分析の要件として以下の3つを挙げている.
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意味合いがアウトプット
分析対象をまとめるだけでは意味がない.分析した結果,何がわかったのかというアウトプットが大事. -
情報収拾の必要性
情報がなければ分析がそもそもできない. -
目的の存在
原因の解決や手段の発見など,分析の目的が存在する.分けて分かることが目的でない.
目的があり,その上で必要な情報を集め,その情報から目的に沿った意味合い(結論)を見つけるのが分析であるということかな?.
最近聞いた,「データマイニングした結果を整理するだけだとアクショナブルじゃない」というのはつまり,「情報をまとめただけで意味合いが得られていない」ということか.
まとめ
- 『思考・論理・分析 「正しく考え,正しくわかること」の理論と実践』を読んだ
- 今までなんとなく使ってきた「論理的」の意味が少しわかった
- こういうメタ知識は大切
- 第三章の「分析」は知らないことが多かった
関連書籍
http://www.utp.or.jp/book/b298898.html
こちらは記号をいじる方の論理学.ルールに従って式を変形させるパズル的なやつ. 「トマトが野菜であるなら、トマトサラダは野菜サラダである」が証明できるようになる.
演繹法や帰納法はこっちにも載っている.