『英語独習法』を読んだ
英語の学習の仕方を学んだ.
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本書には,「スキーマ」という概念が登場する.これは,ある事柄についての枠組みとなる知識である.特に文法を勉強したわけでもないのに,母国語が日本語であれば「てにをは」を(ある程度)適切に選択できるのは,日本語のスキーマを持っているためである.
英語が使えるようになるには英語のスキーマが必要であり,日本語のスキーマはむしろ英語学習においては邪魔になってしまう.日本語では「可算・不可算」という概念がないため,英語を勉強する際にも「可算・不可算」に注意が向かなかったりする.英語を学習する際には,英語のスキーマを作るという意識を持たなければならない.
単語ひとつにしても,母語話者がもつ単語の知識には以下のような項目が含まれている.
- その単語と共起する単語
- その単語の頻度
- その単語の使われる文脈(フォーマリティの情報を含む)
- その単語の多義の構造(単語の意味の広がり)
- その単語の属する概念の意味ネットワークの知識
英単語に対応する日本語を知っているだけでなく,これらの情報がなければ,文脈や状況に合った適切な単語を使うことはできない.
英語のスキーマを身につけるには,以下のことが重要になる.
- 自分が日本語スキーマを無意識に英語に当てはめていることを認識する.
- 英語の単語の意味を文脈から考え,さらにコーパスで単語の意味範囲を調べて,日本語で対応する単語の意味範囲や構文と比較する.
- 日本語と英語の単語の意味範囲や構文を比較することにより,日本語スキーマと食い違う,英語独自のスキーマを探すことを試みる.
- スキーマのズレを意識しながらアウトプットの練習をする.構文のズレと単語の意味範囲のズレを両方意識し,英語のスキーマを自分で探索する.
- 英語のスキーマを意識しながらアウトプットの練習を続ける.
日本語のスキーマと英語のスキーマは異なる.言語の学習の際には,つい母国語を基準に考えてしまうが,そこでスキーマの違いを意識しながら学習することで,異なるスキーマを身につけることができる.
学び方
単語が使われる構文を調べる
Cambridge Dictionary | English Dictionary, Translations & Thesaurus
English - Japanese で検索すると例文があまり載っていない("more example"がない)ので,Englishで検索するとよい.
例文から,構文のパターンやどのような前置詞が使われているかなどを確認する.また,なぜその前置詞が使われているかを考えたり,意味の違いを推論したりするとよい.
似ている単語を知る
単語の意味を深く理解するには,類義語との関係性を知ることが重要である.
SKELLは無料のコーパスである.ある単語の例文だけではなく,共起する単語や,類似する単語を調べることができる.
embarrassedと近い単語にashamedがあるのは理解しやすいが,disappointedも近い単語とされている.embarrassedとdisappointedが近いというのは不自然に思えるが,ここでいう「類似」とは,意味の近さではなく共起のパターンの近さである.つまり,embarrassedとdisappointedは,それぞれ似たような文構造になることを示している.
リスニングを鍛える
リスニングの力を向上させるためには,以下のことが重要になる.
- 語彙を増やす
- スキーマを使う
- マルチモーダルな情報を手がかりにする
リスニングは単に音を聞き分けているだけでなく,無意識のうちに次に来るであろう内容を予測している.そのため,予測ができなければ熟知している単語ですら聞き取れない.ある程度の語彙や知識がなければ,リスニングの学習は難しい.
マルチモーダルな情報とは,リスニングでいうと,音声以外の内容についての情報である.例えば,映画やドラマでは,音声だけでなく,登場人物の身振りや状況も知ることができる.学習の際は,音声以外の情報も得られるコンテンツを使うと良い.
わかったこと
- 英語を学習する際には,日本語との違いを意識する必要がある
- 英単語を調べるときは,その単語に対応する日本語だけでなく,類似する単語や利用される文脈なども一緒に調べる必要がある
- リスニングをするなら,内容についてある程度のスキーマが出来てからの方が良い
- 多読は英語学習における万能薬ではない